Portland に学ぶこれからの街づくり2016

世界で最も注目される都市ポートランドに学ぶこれからのまちづくり

情報技術や移動手段の発達により、世界はフラット化し、国家間競争の時代から都市間競争の時代に入っている。都市はクリエイティブクラスと呼ばれる優秀な人材や世界経済を牽引する優秀な企業を誘致するため、様々な開発や規制緩和などの取り組みを行なっている。そんな競争が激しさを増す中で、ひときわ目を引く都市がアメリカのオレゴン州ポートランドである。

コンパクトシティ、スマートシティ、環境にやさしいまちなどの成功事例として近年脚光を浴びているポートランドにその成功のヒントを求めるべく多くの建築家、都市計画課、自治体や政府関係者が訪問していると聞く。また、全米中から若者がクリエイティブな仕事や自由な生活を求め集まっている。日本でも多くの自治体がコンパクトシティやスマートシティへの取り組みを始めているが、未だ世界と戦うレベルに至っていない。

公共空間の開発に携わるコトブキグループは、ポートランドで活躍する方へのインタビューや最新の開発事例を自身の目で確認し、独自に成功の秘訣を探った。

"Think Different." 異端のまちづくり、ポートランド

“Think different.” 1997年 Apple Computerの広告スローガンである。ポートランドにはAppleの創業者 故Steve Jobsの在籍したリードカレッジがある。彼はここでカリグラフィーを学び、のちにマッキントッシュに美しいタイポグラフィを使用し、話題を呼んだ。その後、一度は挫折をするものの、iPhoneやMacは我々のライフスタイルを一変させ、我々が創造もしえなかった世界を作り出すことに成功した。ここポートランドも、環境汚染やダウンタウンの治安悪化など様々なトラブルを抱えながらも、32歳でポートランド市長となったゴールドシュミットらの活躍によって、見事に再生し、世界で最も魅力的な都市として、また、未来の都市のあるべき姿として、多くの人を引きつけている。人のために情報機器を再発明したJobsと、人のためのまちづくりを再発明したポートランドには通じるものがとても多い。

賑わいのあるまちづくり。PDCの山崎さんに聴く

ポートランド都市圏の経済発展と雇用拡大という大役を担う組織ポートランド市開発局(通称PDC)を訪問した。PDCの中にある国際事業開発オフィサーとして働く山崎さんに、世界から注目されるポートランドのまちづくりの方針や、まちの声を行政に生かすネイバーフッドアソシエーション、TIFなどの制度についても惜しみなくご説明をいただいた。

人との対話を大切にする創造的なまちづくりを学ぶ

遊び心いっぱいのオフィスを持つ地元ランドスケープデザイン事務所PLACEを訪問した。エコロジー、サスティナビリティ、コニュニティといったテーマに力を入れている。アメリカ国内に限らず、アジア、ヨーロッパと活躍の幅を広げており、近年日本でもいくつかのプロジェクトに参加している。ここでは、日本での取り組みをご紹介いただき、そのから見た日本のまちづくりについて意見をいただいた。

環境先進都市がもたらすメリットを体験する。

過剰な木の伐採によりスタンプタウンと呼ばれ、沿いを流れるウィラメット川は全米一汚いと呼ばれ、郊外の過剰宅地開発により進む職住分離によるダウンタウンの治安悪化など、過去のポートランドは人のための街と呼ばれるには程遠い場所であった。しかしながら、全米初となる高速道路の撤去を始め、数々の環境対策を施し、今では、全米有数の環境都市として生まれ変わっている。環境優先は人のためでもあり、おかげでダウンタウンには人が戻り、リバーフロントは美しく生まれ変わり、環境技術をふんだんに盛り込んだ大規模開発も進んでいる。我々は、公共交通やNikeが協力するレンタサイクルなどを乗り継ぎ、この街の魅力を体験した。

文化の体験を通して、ポートランドの創造性・先進性を感じる

先進性はまちづくりだけではない。衣食住の全てでポートランドらしさを感じさせてくれる。日本とのつながりも深く、日本が忘れかけている伝統さえここでは大切に継承されている。こうした文化もまた、まちづくりに大きな影響を与えていた。人は文化を作り、文化が街を緩やかに作っている。こうした体験を通して、短期的な効果を狙う資本にだけ従うだけは、まちづくりはできないと肌で体験することができる。